■廃棄物処理で初の株式公開へ 異業種提携で業容拡大
市川環境エンジニアリングは、首都圏を中心に、一般・産業廃棄物の収集運搬・処理業を中核に環境ビジネスを展開している。これら“静脈産業”となぞらえられる分野で各種リサイクルやコンサルティングサービスなど、多様な事業を手がける。昨今の環境機運の高まりを背景に、「総合環境エンジニアリング企業」への変貎を急ぐ。(冨岡耕)
「“汚い”“危険”“きつい”のいわゆる三Kといわれる廃棄物処理業のイメージを払拭(ふっしょく)しなければ静脈産業の成長はない」
石井邦夫・市川環境エンジニアリング社長は、この信念を貫き、単なる清掃センターだった同社を地元・千葉県内有数の成長企業に導いてきた。これまで、大型テーマパークや丸の内ビルディング(丸ビル)など優良顧客を次々に獲得。一般・産業廃棄物を運搬・処理する一方、維持管理やビル清掃、リサイクルサービスなど事業のすそ野を広げている。
◆国内最大プラント
二〇〇三年三月期の売上高は、前年比横ばいの約八十億円を確保。五カ年経営計画の最終年度である二〇〇六年三月期には売上高百億円、経常利益七億二千七百万円を目指す。同時に、廃棄物処理専業では初の株式公開も視野に入れるなど、業界の草分け的存在だ。
このところ、静脈産業などの環境ビジネスは拡大基調にある。環境に配慮した製品購入を義務付けるグリーン購入法など環境関連法が続々と整備され、社会の環境意識が高まっているからだ。これを追い風に、同社は廃棄物からRDF(ごみ固形化燃料)をつくる行徳工場(市川市)に約十億五千万円を投じ、プラント能力を国内最大級の年間一万四〇〇〇トンへと倍増する。塩化ビニール除去装置の導入により、石炭と同等レベルのRDFを製造できる「高付加価値型リサイクル工場」として五月にも再稼働する。
一方、異業種との業務提携にも積極的だ。九八年に家電リサイクル法をにらみ、三菱電機と共同出資で家電リサイクル処理施設の運営会社を設立。その後、三菱電機以外の家電メーカーも資本参加した。また、千葉県下の四市や新日本製鉄などと君津地域広域廃棄物処理施設「かずさクリーンシステム」を設立するなど、業容拡大を目論む。「異業種との業務提携により、幅広い観点から循環型社会の構築に貢献できる。また、廃棄物業界全体の地位向上にもつながる」と石井社長は意気盛んだ。
◆再生事業に力点
今期は、新規事業の育成に軸足を置く。なかでも、昨年末に参入したパチンコ機など遊技機器のリサイクル事業を軌道に乗せることに力を注ぐ。電子機器やOA機器などを幅広く扱うことで、現行の年一万台規模を早期に年十万台に引き上げる考えだ。また、汚染土壌処理ビジネスや、一般家庭用の生ごみ処理機の商品化で同社初となる消費者向けビジネスにも参入した。これら、多角的な事業展開で収益基盤を強化する。
また長期ビジョンでは、二〇〇五年度以降に稼働予定の日量一〇〇トンと国内最大級の食品廃棄物リサイクル施設が目玉。バイオガス燃料電池の採用など先導的な技術を活用した大型メタン発酵施設で、東京都が進める東京湾臨海部のリサイクル工業団地「スーパーエコタウン」に建設予定だ。
株式公開への地歩は固まった。石井社長は「期待半面、リスク半面。産業廃棄物業界のイメージアップにもなればいい」と目を輝かす。 |